相続のご相談を受けていらっしゃる税理士・弁護士の先生方から、「依頼者様の遺品に見覚えのない高級時計が出てきたのですが、どう扱うようご案内すればよいでしょうか」というお問い合わせをいただくことがあります。

時計を手に取ると、想像以上にずっしりとした重みがあり、高価そうに見えるため、「磨いた方がいいのか」「修理に出してから査定を受けた方がいいのか」と、
依頼者様が判断に迷われるケースも少なくありません。

結論からお伝えすると、依頼者様には「何もせず、そのままの状態で保管する」ようご案内ください。

この一手間を惜しんでしまうことで、評価額が下がってしまうケースを、私は現場で何度も見てきました。

この記事では、先生方が依頼者様にお伝えいただきたい5つの注意点を、実際の事例を交えてご紹介します。

実際にあったご相談から

半年ほど前、ある先生からご紹介いただいた相続人の方から、「父の遺品に高級時計が3本あり、査定をお願いしたい」というご相談をいただきました。お父様が趣味で集めていらしたそうで、いずれも状態の良いものばかりでした。

お預かりして1本ずつ拝見していく中で、そのうちの1本だけ、ケースの角がわずかに丸みを帯び、裏蓋の刻印がかすれていることに気づきました。

ご本人にお聞きすると、「せっかく評価に出すのだから、きれいな状態で見てもらいたくて」と、遺品を整理する段階で、近所の時計店に研磨をお願いしたとのことでした。

決して悪気があったわけではなく、むしろ大切に扱おうとされた結果です。

しかし、残りの2本と比べると、この1本だけ評価額に差が出てしまいました。

理由ははっきりしていて、研磨によってケースの角の処理や刻印の状態が変わり、オリジナルと比較したフォルムの変化が大きかったからです。

同じモデル、同じ年代のものであっても、こうした細部の状態次第で評価は変わります。

近年の高級時計市場では、製造当時の状態をどれだけ保っているか、いわゆる「オリジナルコンディション」が非常に重視されています。

研磨を行うと、ケースがわずかに痩せたり、ラグやベゼルのエッジ(角)が丸くなったりして、当時のフォルムが損なわれることがあり、刻印が薄くなってしまう場合もあります。

同じモデルであっても、こうしたオリジナルの状態に近い個体ほど高く評価される傾向があるため、良かれと思って行った研磨が、かえって評価を下げてしまうことになるのです。

この一件があってから、先生方にご相談いただいた際には、まず「依頼者様はまだ時計に手を加えていませんか」と確認させていただくようにしています。

良かれと思ってとった行動が、かえって評価を下げてしまう。だからこそ、依頼者様と最初に接する先生方から、早い段階でお伝えいただくことが重要だと感じています。

そもそも高級時計はどう評価されるのか

高級時計は、相続税の計算上、不動産や株式のように「これに当てはめれば金額が決まる」という公的な評価基準がありません。

時計や宝石、家具といった、いわゆる「身の回りの動産」に分類され、国税庁の財産評価基本通達(129 一般動産の評価)を確認してみると、こうした動産は「売買実例価額や精通者の意見価格などを参酌して評価する」と定められています。
(出典:国税庁 財産評価基本通達 第1節 一般動産

つまり、実際に売買されている価格や、その分野に詳しい専門家の見立てを踏まえて、一本ずつ状態を見ながら評価額を決めていくということです。だからこそ、状態や付属品といった細部が、そのまま評価額に直結します。

同じモデル、同じ年式のものでも、評価額に数十万円単位の差が出ることは珍しくありません。

ここでは、遺品から高級時計が見つかった際に、相続人へ伝えておきたい5つの注意点を解説します。

注意点① 評価前に磨き・修理・電池交換をしない

長年しまわれていた時計は、くすんでいたり、止まっていたりするものです。

依頼者様が「動く状態にしてから相談したい」とお考えになるのはよくあることですが、修理や研磨を行うと、ケースの刻印や文字盤、ムーブメントなど、評価の重要な手がかりとなる部分の状態が変わってしまいます。

まずは手を加えず、見つかったそのままの状態で保管するよう、早い段階でお伝えください。

特に非正規店での部品交換は、改造品と判断される要因になりますので、注意が必要です。

注意点② 箱・保証書・予備コマを処分しない

評価では、時計本体だけでなく、下記のような付属品の有無も価値を左右します。

  • 購入時の箱、保証書
  • 予備のコマ、交換前のベルト
  • 領収書、取扱説明書
  • 修理明細書やオーバーホールの記録

本体と付属品が別の場所に保管されていることも多いため、書斎や金庫など関連しそうな場所もあわせて確認するよう依頼者様にお伝えいただけると良いと思います。

付属品かどうか判断がつかないものについても、評価が終わるまでは処分しないようご案内ください。

実際、時計本体だけをお預かりした後、ご自宅を整理される中で、箱や保証書、予備のコマ、修理明細書、オーバーホールの記録などが後日見つかることは珍しくありません。

特にロレックスでは、保証書や予備のコマがそろっているかどうかが評価額に影響しますので、本体だけでなく、関連しそうな付属品や書類についても、あわせて探していただくよう依頼者様にお伝えください。

注意点③ ネットの相場だけで売却の判断をしない

型番を検索すればおおよその相場はすぐに分かります。

ですが先ほどお伝えした通り、高級時計は一本一本の状態を見て評価をおこないます。依頼者様がネット上の一つの価格だけを見て、「この程度なら」と売却してしまうと、実物の状態を後から確認する手立てがなくなります。

相続税申告や遺産分割の資料とする場合は、評価を終えるまで売却の判断を保留するようにお伝えいただきたいです。

注意点④ 依頼者様お一人だけで判断を進めない

複数の相続人がいる場合、時計の存在を最初に見つけた方だけで話を進めてしまうと、後になって行き違いが生じることがあります。高額になりやすい財産だからこそ、早い段階で他の相続人とも情報を共有するよう促してください。

見た目だけでは価値を判断しにくい分、想定していた以上の評価額になることも珍しくありません。次の情報を記録しておいていただくと、その後の手続きがスムーズです。

  • 時計本体と付属品の写真
  • 発見した場所と状態
  • 保管している相続人の名前

注意点⑤ 修理歴やオーバーホール記録の有無を確認

正規店でのメンテナンス歴が分かる書類があれば、内部の状態や信頼性を判断する手がかりになります。記録が見当たらない場合でも心配は不要です。

実際、記録が全く残っていない状態でお持ち込みいただくケースも珍しくありません。資料の有無にかかわらず、そのままの状態でご相談いただくよう、依頼者様にお伝えください。

評価を依頼する前に確認しておきたいもの

ここまでお伝えした5つの注意点を踏まえたうえで、依頼者様に以下を確認していただくと、評価の手続きがよりスムーズに進みます。

  • 時計本体(複数ある場合はすべて)
  • 箱・保証書などの付属品一式
  • 購入時期が分かるメモや領収書
  • 発見した場所・日時のメモ

無理に全て揃える必要はありません。今お手元にあるものをまとめておくだけで十分です。

高級時計の相続評価は、専門機関へ

高級時計は、ブランドやモデル名だけで価値が決まるものではありません。状態や付属品、市場での取引実態まで踏まえて、個別に評価する必要があります。

依頼者様にお伝えいただきたいポイントは、次の3つに集約されます。

  • 手を加えさせない(磨く・修理する・電池交換するのは評価後)
  • 処分させない(本体だけでなく付属品も保管)
  • 一人で決めさせない(早めに他の相続人と共有する)

にじや相続評価では、現役の質屋として培ってきた実売相場の知見をもとに、市場の取引実態に即した評価を行っています。

冒頭でご紹介したケースのように、状態や付属品の細部が評価を左右することを、日々の現場で実感しています。だからこそ、お預かりした際にはまず状態をありのまま確認し、憶測ではなく実物に基づいた評価書をお作りしています。

申告書の添付資料として、税務署への説明力を高める内容にしております。

ご依頼は専用フォームから承っており、税理士・弁護士の先生方からのご相談はもちろん、依頼者様ご本人からの直接のご依頼にも対応しております。

郵送でのお預かり・ご返送も可能ですので、動いていない時計、付属品が見当たらない時計についても、まずは今の状態のままご相談ください。

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  にじや質店(東京都青梅市野上町)
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投稿者プロフィール

代表鑑定士 佐々木 英明
代表鑑定士 佐々木 英明鑑定歴27年の代表鑑定士
東京都青梅市在住

株式会社クリエイティブファクトリー 創業者&代表取締役

【保有資格】
第1級陸上無線技術士
電気主任技術者
電気通信主任技術者

「真空管と質屋をこよなく愛する青梅人」で、質屋初代で質蔵を2つも建てたことがあり、電気系に強く自分で特許出願ができるという特技を持つ。

1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内大手特許事務所にて特許出願を担当
1998年 個人事業主として創業し、真空管の輸入販売を開始
2000年 法人成りにより合資会社ささきに組織変更 資本金110万円
2012年 資本金1000万円に増資
2013年 株式会社クリエイティブファクトリーに組織変更
2014年 総合買取 にじや実店舗オープン
2022年 青梅街道 野上交差点そばに「にじや質店」をオープン

【好きな仕事】
ブランド品・貴金属・時計等の真贋鑑定、質屋、古物商、真空管の輸入販売、音響コンサルティング

【運営サイト】
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