遺産分割の協議において、不動産や預貯金と並んで争いの種になりやすいのが一般動産の取り扱いです。

ロレックスなどの高級時計や宝石、ブランド品の評価額をめぐり、相続人の間で意見が真っ向から対立するケースは頻繁に発生します。

家庭裁判所での調停や訴訟に発展した場合でも、動産の客観的な評価根拠がなければ手続は平行線をたどります。

この記事では、遺産分割案件を扱う弁護士の方へ向け、実務に役立つ動産評価の知識を解説します。

「感覚的な価格主張」では交渉が進まない現実を踏まえ、第三者評価書を強力な交渉材料として活用する方法をお伝えします。

「感覚的な価格主張」では交渉が進まない理由

「生前に高く買ったものだから価値があるはずだ」
「今のネット相場ならもっと高いはずだ」

といった主観的な主張では、相手方を納得させることはできません。

高級時計や宝石の実勢価格は、製造年代や保存状態、付属品の有無によって数百万円単位で変動することがあるからです。

裁判所の公式案内においても、遺産分割調停の手続では必要に応じて遺産の鑑定を行うなどして事情を把握し、合意を目指すと明記されています。

URL:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html
【出典】裁判所「遺産分割調停」

このように、客観的な鑑定や評価データがなければ、実務上、遺産分割の手続をスムーズに進めることは困難です。

弁護士自身がインターネットの買取相場やオークションの落札履歴を集めても、相手方から信憑性を疑われれば反論に窮してしまいます。

購入価格より「大幅に下がる」品物 5つの落とし穴

遺産分割の現場では、遺族が「高価なはずだ」と信じている品物が、実際の評価では大幅に下がるケースが後を絶ちません。

争点になる前に、以下の典型例を把握しておくことが重要です。

ノーブランドのアクセサリー(凝ったデザインのリング・ネックレス等)

販売価格には職人の加工代が上乗せされていますが、動産評価ではデザインの凝り具合は一切考慮されません。

評価額は「重さ×買取単価」のみで算出されるため、購入価格との乖離が非常に大きくなります。

婚約ダイヤモンド指輪・色石(エメラルド・サファイア・ルビー等)

購入時100万円の婚約指輪が、評価額では10万〜20万円程度になることも珍しくありません。

購入時と評価時の差は10倍〜20倍に達することがあります。

同様に、エメラルド・サファイア・ルビーなどの色石もギャップが大きくなりやすい品目です。

なお、ハリー・ウィンストンやミキモトなど一流ブランドのジュエリーは、ブランド価値が加味されるため比較的下落幅が小さくなります。

二流ブランドの時計・バッグ

ブランドの格が評価額に直結します。時計の場合、一流のロレックスが定価以上の評価になるのに対し、二流に分類されるオメガは定価の3分の1以下になることもあります。

バッグ類でも、シャネルやエルメスは定価以上の評価になる一方、プラダやグッチは定価の5分の1以下になるケースも見られます。

修理歴・改造歴のある時計

正規ディーラーでのメンテナンスはほとんど影響しませんが、町の時計店など非正規での修理は「改造」とみなされ、評価額がゼロになる場合があります。

高級時計であっても、修理歴の確認は欠かせません。

購入価格より「大幅に上がる」品物 見逃すと損失に

一方で、購入時より現在の評価額が大幅に上がっている品物も存在します。

こちらを低く見積もると、相続人の一方が不当に損をする結果になりかねません。

ヴィンテージのロレックス スポーツモデル

1990年代に新品40万円程度で販売されていたロレックスのスポーツモデルが、現在では300万円前後で取引されているケースがあります。

当時の購入価格を基準に分割協議を進めると、実態と7倍以上の乖離が生じることになります。

金無垢モデルの時計・金素材の品物

金価格が安かった時代、ロレックスの金無垢モデルは150万円前後で購入できましたが、近年の金相場高騰により現在の評価額は600万円を超えるケースもあります。

素材価格の変動が品物の価値を4倍以上に押し上げた典型例です。

購入時の価格では到底測れない現在価値を、正確に把握することが不可欠です。

「当時1000万円した」は通用しない 鑑定士が見る唯一の基準

「当時1000万円した」「生前に大切にしていたものだから価値があるはずだ」遺産分割の現場ではこうした主張が頻繁に上がります。

しかし鑑定士の立場から申し上げると、相続品の評価において過去の購入価格は全く意味を持ちません。調べることすらしません。相続品はあくまで中古品です。評価の基準は、日々変動する現在の中古市場価格のみです。

傷だらけで箱もない1000万円の時計は、現在の中古相場で実際に取引される金額で評価されます。

購入時の価格がどれだけ高くても、現在の市場で買い手がつかなければ、その価値はありません。この「購入価格と現在の評価額のギャップ」こそが、遺産分割における感情的な対立の根本原因です。

当事者双方が納得できる唯一の解決策は、現在の中古市場に精通した第三者による客観的な評価書を根拠とすることに他なりません。

第三者評価書が交渉材料として機能する仕組み

遺産分割の交渉を有利かつ円滑に進めるためには、当事者と利害関係のない第三者による客観的な評価データが不可欠です。動産のプロフェッショナルである専門機関が発行した第三者評価書は、相手方の主観的な反論を封じるための極めて強力なツールとなります。

特に金地金や高級時計の真贋判定は、専門の機材と深い知識がなければ正確な評価を下すことができない専門領域です。

「専門機関の鑑定士が実物を直接確認し、客観的なデータに基づいて算出した評価額である」という事実は、調停委員や裁判官に対しても強い説得力を持ちます。

曖昧な主張のぶつかり合いを排除し、誰もが納得せざるを得ない基準を提示することが、第三者評価書の最大の役割です。

実売相場と科学的データの組み合わせによる強み

動産評価において最も信頼性が高いのは、日々市場で売買を行っている現役の鑑定士(質屋など)が持つリアルな実売相場データです。

さらに、人間の経験や目利きだけでなく、科学的なデータを用いることで評価の信憑性は飛躍的に高まります。

非破壊のX線分析装置などを活用すれば、品物を傷つけることなく表層部の成分を正確に数値化できます。「この宝石の台座の表層部にはプラチナが何パーセント含まれているか」といった科学的な客観的データを明示することが重要です。

経験豊富な鑑定士が導き出した最新の実売相場と、専門機材による成分データを組み合わせた評価書は、疑いようのない疎明資料として機能します。

弁護士の実務に直結する専門機関の活用

実際に第三者評価書を利用した弁護士からは、交渉が飛躍的にスムーズに進展したという声が多く寄せられています。

相続人間で長期間にわたり平行線をたどっていた遺産分割協議が、客観的なレポートを一枚提示しただけで即座にまとまるケースも珍しくありません。

弁護士が本来注力すべき法的な争点整理や交渉に時間を割くためにも、手間のかかる動産の評価は専門機関へ任せるのが合理的です。

また、複雑な遺産分割案件を抱え、動産評価の根拠資料を早急に必要としている状況下で、迅速に評価書を発行できる専門機関の存在は頼りになります。

遺産分割の調停や訴訟を有利に導くために、実売相場と科学的データの双方を兼ね備えた専門機関の活用をぜひ検討してみてください。

第三者の客観的なデータこそが、依頼者の利益を最大化し、弁護士の業務負担を軽減する最良の選択となります。

裁判・調停で使える第三者評価書|弁護士向け動産相続評価専門|にじや相続評価

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投稿者プロフィール

代表鑑定士 佐々木 英明
代表鑑定士 佐々木 英明鑑定歴27年の代表鑑定士
東京都青梅市在住

株式会社クリエイティブファクトリー 創業者&代表取締役

【保有資格】
第1級陸上無線技術士
電気主任技術者
電気通信主任技術者

「真空管と質屋をこよなく愛する青梅人」で、質屋初代で質蔵を2つも建てたことがあり、電気系に強く自分で特許出願ができるという特技を持つ。

1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内大手特許事務所にて特許出願を担当
1998年 個人事業主として創業し、真空管の輸入販売を開始
2000年 法人成りにより合資会社ささきに組織変更 資本金110万円
2012年 資本金1000万円に増資
2013年 株式会社クリエイティブファクトリーに組織変更
2014年 総合買取 にじや実店舗オープン
2022年 青梅街道 野上交差点そばに「にじや質店」をオープン

【好きな仕事】
ブランド品・貴金属・時計等の真贋鑑定、質屋、古物商、真空管の輸入販売、音響コンサルティング

【運営サイト】
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